東京・神奈川の浸水危険地 後背湿地(氾濫原低地)

 武蔵小杉のタワーマンション浸水被害

2019 年の台風19 号は東日本各地において河川の氾濫を引き起こし、多くの浸水被害を出しました。

東京都と神奈川の間を流れる多摩川も各場所で氾濫を起こし、床上もしくは床下浸水の被害を引き起こしました。中でも川崎市高津区溝口6丁目の多摩川に支流の平瀬川が合流する地点ではマンションの1階部分が水没して死者も出ました。

被害があったマンションは川が流れていた跡(旧河道)に建っており、付近の土地よりも1から2m程度低くなっています。このため洪水が起こると多摩川の水が逆流して来ると共に周囲から内水氾濫した水も流れ込むためマンションの 1階部分が水没するほどの水が溜まったとされます。


この台風19号の被害により、川崎市中原区の武蔵小杉駅付近でもいくつかのタワーマンションに浸水被害が出ました。武蔵小杉一帯の古い集落が立地している場所は過去の多摩川の流路に沿って形成された自然堤防です。

自然堤防は周りの氾濫原よりも少し高くなっている場所で水害被害を受けにくい地域です。自然堤防の後ろに形成されるやや低い土地は後背湿地(氾濫原低地)と呼ばれ、水が溜まりやすい場所です。

台風19号で被害が発生したタワーマンションの立地は地形的には後背湿地で水はけが悪くて内水氾濫しやすい場所です。後背湿地は水田として利用されて来ましたが、一度洪水が起きると浸水するリスクがあり砂や泥を多く含むため地盤が軟弱で、人が家を建てない忌み地のような場所でした。

昔は後背湿地を水田として利用して人の住まいは少し高くなっている自然堤防に建てるのが一般的でしたが、現在の都市地開発の結果、後背湿地に多くの家やマンションが建っています。浸水した武蔵小杉のタワーマンションも後背湿地に建っています。

都市では下水道や排水路の整備が進んでいるため浸水の問題が解消されつつある所が多いが、昨今のような想定を超える豪雨が発生した場合には本来の自然の特性が現れることもあります。

横須賀線の武蔵小杉駅付近も浸水被害が大きかった場所ですが、この付近は昔は川が流れていた場所で浸水しやすい場所であることが昔の地図から分かります。


後背湿地に立地する武蔵小杉のタワーマンション群

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