多摩市唐木田の忌み地と火災事故の関係
多摩市唐木田の忌み地と火災事故の関係
多摩市唐木田のショッピングモール付近はかつて厳耕地(げんごうじ)と呼ばれ、その周辺は関わると祟りがあるとされる忌み地であった。
その厳耕地にはかつて怪異が起こる「怒り井戸」が存在し、井戸があった場所は現・多摩市唐木田3丁目付近(D社研修センターもしくは研修センター前の道路付近)と云われており、死体が投げ込まれたことに怒った井戸はごうごうと不気味な音を立てるようになったという。
多摩地区の昔話では、厳耕(げんごう)という旅の修験者が、とある家に一夜の宿を求めた。厳耕はしばらく居座り、やがてその家の老婆(妻)と不倫関係となる。厳耕と老婆は、邪魔になった娘を追い出し、夫を殺して井戸に投げ込んだという。
死体を投げ込まれたことに承知できぬ井戸の神様は、天気の良い日でもゴトゴトと音を立てたり、雨の日には黒い水を出して怒ったと云う。これが怒り井戸と呼ばれるようになった。
また、厳耕と老婆の悪事がお上にバレて松の木に磔(はりつけ)にされ、その木は磔松と呼ばれた(怒り井戸の近隣に磔松があったと言う)。そして二人の死体は上ノ井戸・下ノ井戸にそれぞれ投げ込まれ、これが怒り井戸となったという話もある。
その後、怒り井戸は埋め立てられて、田畑となり安く売りに出されていた。近世になり、この忌み地を買った者がいたが、身の回りで悪いことが続いたので祟りを鎮めるために石塔を建てたと云う。
その後、怒り井戸があった場所には大きい道路が通り、D證券の研修センターが建つなど様変わりし、昔の面影は全く残っていない。
旅の僧が殺人事件に関わる昔話(殺すもしくは殺される)は全国各地にある伝説で、磔松の話しも各地に存在することから、怒り井戸の昔話は謂わば都市伝説のような話ではある。
しかし、恐ろしいことは怒り井戸が存在した唐木田3丁目付近では火災や焼身自殺による死亡者が10名発生している点で、厳耕伝説の真偽はさておき祟りが存在する忌み地であることは間違いないようだ。
5名が死亡した火災事故では不運が重なって大事故に発展したとされ、土地の所有者にも禍(わざわい)が続いたことから、怒り井戸に関係する何らかの土地の因縁が関与している感がある。
◆記録に見る怒り井戸
「落合地区唐木田に厳耕地(げんごうじ)という所がある。ここに怒り井戸とよばれる井戸があって、天気のよい日でもゴトゴトと音がして不気味であったという。
昔、厳耕という法印が老夫妻の家に滞在し、老婆と密通し、共謀して夫を殺し井戸に捨ててしまった。やがて悪事が露見し、二人は磔(はりつけ)になり、その松の木を磔松という。
また、死体を投げ込んだ井戸は、雨が降るとモクモクと黒い水が出、怒り井戸とよばれるようになった(『叢書5』)。
『多摩町誌』には、老婆と旅僧が磔になって、二人の死体を上ノ井戸・下ノ井戸にそれぞれ投げ込まれたが、承知できぬ両方の井戸からごうごうと水が流れ出し、厳耕地の怒り井戸とよばれるようになったと記している。ここは、祟りのある所だといわれ、後に、その土地の持ち主が石塔を建てた。」
写真8-5 厳耕地(中央奥)(昭和50年ごろ) |
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