乞田川のアズキトギ婆(多摩市貝取)

 多摩市貝取の付近は湧水が多く、乞田川も流れていることからカッパや小豆洗いなどの川に現れる妖怪にまつわる話が多い。

 崖が崩れてちょうど人が入れるくらいの穴があり、そこに湧き水がたまっていた。そこにはアズキトギババアがいたという。悪いことをする子供はアズキトギ婆に食べられてしまうと言われていたので、幼いころは走ってその前を通った。その際、ジョキジョキと小豆をとぐ音がしたという。

(多摩市史より)


アズキトギババアは旧川崎街道に架かる行幸橋近くの竹やぶに潜んでおり、親の言うことを聞かない悪い子供を捕まえて食べるとされた。その竹やぶは、びっくりドンキー聖蹟桜ヶ丘店のあたりと思われる。

水辺で聞こえる異音をアズキトギババアの仕業にして、子供の躾けの材料として使われていたようである。

[解説]

小豆洗い(あずきあらい)は日本の妖怪の一種で、主に川や水辺で小豆を洗う音を立てる存在として知られています。この妖怪は音だけが聞こえたり、姿が現れることが少なく、人を驚かせる妖怪として民間伝承に登場します。

小豆を洗っている「ザッ、ザッ、ザッ」「シャッ、シャッ、シャッ」とか「ショキ、ショキ」という音を立てることが特徴で、人々に恐怖心を抱かせますが実際には特に危害を加えるわけではないとされています。


小豆洗いの正体として最もよく語られるのは、自然現象や音を妖怪として捉えたという説、水の流れや石がこすれる音、木の葉や小枝が風で動く音など、夜間や静かな場所で聞こえる自然の音が「小豆を研ぐ音」に似ているため、それを妖怪の仕業と結びつけたものとされています。


水流の音: 川や池の水が石や岸にぶつかって発する音や、川底で石が転がる音が、小豆を洗う音のように聞こえることがあります。これを不気味な存在として「小豆洗い」と名付けたのではないかと考えられます。


動物の活動音: 夜行性の動物が水辺で活動する際に発する音が、人々に不気味な印象を与えた可能性もあります。例えば、タヌキやカエルなどの動物が水の近くで動き回る音が「小豆を洗っている」と想像されたともいわれています。


正体はサギ類や虫の声ではないか?

小豆を研ぐような声で鳴く鳥や虫は意外と多く、ツユムシの仲間はシャッ、シャッ、シャッと物がこすれるような音を出す。クマゼミもシャーシャーと鳴くので夜に川辺で聞くと少し怖いかも知れません。


個人的には夜行性の鳥の鳴き声を聞いて妖怪だと勘違いしたものがアズキトギ婆や小豆洗いの正体と考えています。アオサギの甲高い鳴き声やカモのくぐもった鳴き声は遠くから聞くと小豆を研ぐような音に聞こえるかも知れません。


その他の正体としてイタチの鳴き声(警戒音)や、タヌキやキツネが川辺で活動する音がその正体だとも言われます。イタチを小豆洗いやアズキトギ婆の正体とする説が多いようです。


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